初代兼定

特別保存刀剣 NBTHK Tokubetsu Hozon Paper

No.A00110

白鞘  金着二重ハバキ

     売 約 済

刃長 : 68.6cm  (2尺2寸6分半) 反り : 2.4cm  (7分)

元幅 : 2.8cm 先幅 : 1.6cm 元重 : 0.6cm 先重 : 0.4cm

登録証

大阪府教育委員会

昭和32年08月06日

: 美濃国 (岐阜県-南部)

時代 : 室町時代中期 文明頃 1469-1486年

鑑定書

(公)日本美術刀剣保存協会

特別保存刀剣鑑定書

平成12年12月27日

兼定作

形状

 

刃文

 

帽子

鎬造、庵棟、身幅・重ね尋常に、鎬筋高く、先反りつき、中鋒となる。

板目よく練れて、処々柾がかり流れ、総じて肌立ちごころに、地沸つき、地景入り、白け映りよくたつ。

互の目に、互の目丁子・小互の目など交じり、足入り、匂い本位に小沸つき、ささやかな砂流しかかる。

のたれ込み小丸倒れて地蔵風に返り、指裏長くかえり、先掃きかける。

生ぶ、先栗尻、鑢目鷹の羽、目釘孔二。

説明

志津一派の流れ、赤坂に住す、初代:兼定すなわち和泉守兼定(之定)の父、この工も和泉守を切ると記されているが、これは子の之定から始まったもので、初代:兼定は和泉守は切らない。

 永正を遡る刀工のなかで、兼定と切るものは和泉守兼定(之定)以外に数工おり、年紀のあるものでは享徳4年、康正3年、文明4年などがあり、なかには之定銘に切ったものもある。

 美濃鍛冶は室町期を代表する刀工群の一つであり、その特徴として、天文頃より以前の文亀・永正・大永よりも古いものは、茎の仕立てが茎棟の刃・棟方が丸となり、特に棟方が顕著となる。一方、天文以降のものは角となり、これは茎棟を鑢で削る際に丸くするには、丁寧に鑢かけねばならず相当に時間を要し、角であれば同一方向に強い力で簡単に削ることができ、時間も大幅に短縮することができるためと思われる。また、室町前期の美濃刀工の多くは、兼の字の第三角目が「フ」状にしゃくれており、これは康応年紀の兼吉よりはじまり、前期の刀工に多く、中期にもその手癖が若干うかがえる。

 そして、和泉守兼定(之定)を含め、永正を遡る兼定と切る数工の特徴として、兼の字の第二画目と第三画目の鏨が連れて同じ方向に追い、第九画目の鏨が下から上へ打ち上げ、さらに十、十一、十二画目の鏨が二画目、三画目の鏨同様一列に尻を追いかけるように切るところに大きな特徴がある。これは和泉守兼定(之定)にも当てはまるものなのでご留意いただきたい。

(※ 下図を参照ください)

 永正を遡る兼定の数工のうち、いずれかが初代と思われるが、現在の研究では特定に至っていない。本刀の作者は永正以前まで時代が上がることは、茎の仕立て・銘振りなどより確かであるものの初代であるかは今後の研究が俟たれる。しかし、日本刀工辞典(藤代義雄・松雄:著)や日本刀関七流(山田英:著)や室町期 美濃刀工の研究(鈴木卓夫・杉浦良幸:著)に掲載されている初代とされる兼定銘に酷似しており、私見では数工いる兼定のなかでも、初代:兼定に最も近い有力な候補と思量される。

 本作は、先反りのついた美しい姿に、地鉄は、よく錬れて柾が顕著となり、白け映りが鮮明に立っている。美濃物の白け映りは上作のものは、本作の様に刃区より映りが立ちのぼり、上部の映りに繋がるのが特長の一つとなっている。刃文は、和泉守兼定(之定)を想わせる互の目丁子に、細かな刃中の働きが看取され、完全に締まった匂出来とはならず、わずかに小沸がついている。

 研磨は、よく観察すると美濃物にもかかわらず、差し込みで研磨されている。白け映りが鮮明に立っているのも、その所以であり、おそらくは「日本刀関七流」などの著書がある美濃物の第一人者であると同時に、差し込み研ぎの名人:山田英氏による研磨と推察される。差し込み研ぎというと備前伝が思い浮かばれるが、美濃伝でも兼定・兼元などの良工のものはよく映えるものである。若干の小錆があるものの名人:山田英氏の研磨を研ぎ直すのははばかられる為、そのままの状態で掲載させていただいた。

備考

末古刀 上作。

大業物。

 

指表:物打ち辺の鎬地、指裏:腰元の平地に小傷、その他細かい傷があります。

指表:物打ち辺の刃先に錆、その他部分的に薄錆があります。

初代兼定1
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